約 2,810,496 件
https://w.atwiki.jp/ddr_dp/pages/931.html
IF YOU WERE HERE(激) 曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FA(SA) その他 IF YOU WERE HERE JENNIFER X2 激10 145 282 / 20 Ver.Aにて2016/05/30削除 STREAM VOLTAGE AIR FREEZE CHAOS 57 54 36 34 24 楽譜面(9) / 踊譜面(10) / 激譜面(10) / 鬼譜面(9) 属性 カニ歩き、地団駄、縦連 譜面 http //eba502.web.fc2.com/fumen/ddr/x2mf/ifyou_x_8m.html 譜面動画 https //www.youtube.com/watch?v=EZJ2xQHP5Jk (x?.?, オプション不明) 解説 DDR2ndからの復活曲。譜面は新しく作り直しされているが、当時の面影を色濃く残す。黎明期の曲の激譜面らしく全体的にカニ歩きが多い。 -- 名無しさん (2010-07-10 23 14 53) 当時のMANIAC譜面は2nd時点では存在せず、4thで追加されたもの。そのためか、楽・踊と譜面傾向がかなり異なっている。 -- 名無しさん (2010-07-29 10 08 53) 基本的に4th譜面なのでカニ歩き…なんだけど、イフユー激に限っては妙に同時が遠い&16分4連&終盤の縦3連ラッシュと嫌らしさ満点。踊と同難易度だがどちらが難しく感じるかは個人差がかなり出やすい -- 名無しさん (2013-08-22 22 00 16) 名前 コメント コメント(私的なことや感想はこちら) 4th追加譜面はカニばかりで微妙。というか4thがカニだらけ。 -- 名無しさん (2010-09-26 00 17 37) カニだと思って油断してると突如FAからの渡り配置に襲われる。そこを考慮してやっと踊と同等の難易度と言えるかも。 -- 名無しさん (2013-12-30 23 02 38) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/culdcept2ndex/pages/25.html
一覧 カード名 コスト レア度 効果 アースシェイカー 300+□ R 全ての領地のレベルが1下がる アイスストーム 80 S 全ての火属性クリーチャーに20ダメージを与える アシッドレイン 70 N 全ての防御型クリーチャーに30ダメージを与える アップヒーバル 150 R 対象の領地を火属性に変化させる アバランチ 150 R レベル5の領地に配置されている全てのクリーチャーに30ダメージを与える アポーツ 60 N 使用者のいるマスに全員を呼ぶ(使用者はこのターンのダイスを使えない) イレイジャー 50 E クリーチャー(土地)とセプターにかかった全ての効果を取り除く インシネレート 10 R 使用者は今までに破壊されたクリーチャーの数×20Gの魔力を得て、その数は0になる エクスプロード 80 S 全ての水属性クリーチャーに20ダメージを与える エクソシズム 60 S 対象エリアの全てのクリーチャー(領地)に付いた効果を取り除き、それらのクリーチャーのMHP+10 エナジーフラッシュ 100+□ E レベル1の領地に配置された、全てのクリーチャーを破壊する エレメンタルレイジ 80 S 属性の違う領地に配置されている全てのクリーチャーのHPを1/2にする オーロラ 50 S 全ての護符の価値を20%上昇させる カオスパニック 90 S 全てのセプターの進行方向を逆転する カタストロフィ 300+□ R 全てのクリーチャーに、MHPの50%のダメージを与える クランプ 60 S 対象エリアの全てのクリーチャーのST-20 サンダーストーム 80 S 全ての地属性クリーチャーに20ダメージを与える スウォーム 80 S 対象エリアの、HPが減少している全てのクリーチャーに20ダメージを与える スカージ 80 S 効果の付いた全てのセプターの魔力を30%減らす スカルプチャー 150+□ R 対象エリアの、MHPが30以下のクリーチャーは全てスタチューになる ソニックウェイブ 70 S 先制能力を持つ全てのクリーチャーに20ダメージを与える ダーククラフト 70 E 護符を最も多く数持つセプターは、最も多く持つ護符の数を30%失う ディスビリーフ 90 R 全てのセプターは護符の数×5Gの魔力を失う デスクラウド 80 S 全ての風属性クリーチャーに20ダメージを与える デモニックトレード 200+□ R 使用者の領地のクリーチャーを全てゴブリンに変える使用者は配置されているゴブリンの数×100Gの魔力を得る テンペスト 200+□ R 全てのクリーチャーに20ダメージを与える パニッシャー 100 R 効果の付いた領地のクリーチャー全てに20ダメージ フィースト 20 N 全てのセプターは、各々が持つ領地の数×50Gの魔力を得る プレッシャー 70 N 全ての護符の価値を30%下げる マスグロース 30 R 配置されている全てのクリーチャーのMHP+5 ライトクラフト 50 E 全てのセプターは、ブックを初期状態に戻し、全ての手札を捨て、5枚のカードを引く ライフストリーム 50 S 使用者が配置している全てのクリーチャーのHPを全回復する レイオブロウ 80 S 全てのセプターの手札にある使用魔力100G以上のカードを破壊する レインフォース 60 S 対象エリアの全クリーチャーのST+10
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/518.html
錦繍/一六◆6/pMjwqUTk (モミジ狩りって、モミジの葉っぱを集めるって意味じゃないのね) ラブとあゆみに付いて細い坂道を上りながら、せつなは心の中で呟いた。 家族でキノコ狩りに行ったの、とクラスメイトの由美が話していたのは、先週のこと。獲物が動物じゃなくて植物などを採集するときにも「狩り」と言うのだと知ったのは、そのときだ。 四つ葉町から少し離れたこの丘陵は、せつなには初めての場所だった。丘の斜面は雑木林になっていて、木々はそれぞれの秋の色に染まっている。 「きれいでしょ? せつな。ンフフ~、あのねぇ、この丘のてっぺんまで上がるとね……」 「ラブったら! それ以上言っちゃ駄目よ。せっちゃんをびっくりさせるんでしょう?」 キラキラした目で嬉しそうにせつなを振り返るラブを、あゆみがやんわりとたしなめる。せつなは怪訝そうな、でも期待に満ちた眼差しで、二人の顔を交互に見やる。一番後ろからのんびりと歩いてきた圭太郎は、そんな三人の様子を、ニコニコと見守った。 今日は勤労感謝の日で、学校はお休み。圭太郎の発案で、四人はお弁当を持って、この丘陵にピクニックにやって来たのだった。 (占い館があった森より、ここはずいぶん明るいのね) 物珍しそうに木々を眺めながら歩いてきたせつなが、さっと差し込んだ日の光の眩しさに、思わず額の前に手を翳す。その顔が、フッと柔らかくほどけるように笑顔になった。ちょうど頭の上にあったモミジの枝が、せつなとハイタッチでもするかのように、小さな赤い掌を振っている。 「ああ、このモミジは特に色がいいなぁ。見事な赤だ」 すぐ後ろから聞こえる、圭太郎の穏やかな声。せつなは振り向いて笑顔を返してから、挙げていた手を静かに下ろした。 「ねえ、お父さん」 「なんだい? せっちゃん」 柔らかく包み込んでくれるような声に励まされて、せつなはここへ来てからずっと感じていた想いを、思い切って口に出してみる。 「紅葉って凄く綺麗だけど、これが終われば、木の葉は全部落ちてしまうんでしょう? そう思うと、何だか寂しい気がするんだけど……」 「そうだな」 圭太郎がせつなの顔を見て、静かに頷く。そして不意に悪戯っぽくニヤリと笑うと、ガサガサと落ち葉を踏んで、林の中に分け入った。 「こっちに来てごらん、せっちゃん」 一本の木の下にしゃがみ込んだ圭太郎が、せつなに向かって手招きする。不思議そうな顔でやって来るせつなを待ってから、圭太郎は足元の落ち葉を、そっと掻き分けた。 しばらくすると、表面の落ち葉とは違う、少し湿って黒ずんだ葉が現れる。 「これは、去年の落ち葉だな」 「去年の?」 「ああ。去年の落ち葉の下には、一昨年の落ち葉。その下には、その前の年の落ち葉。そのまた下には、何があると思う?」 「……?」 不思議そうに小首を傾げるせつなを、圭太郎は柔らかな光を湛えた目で、静かに見つめる。 「土だよ。栄養がたっぷり詰まった、真っ黒な土だ。落ち葉はね、冬の寒さから木の根を守りながら、地面に住む虫たちによって、何年もかかって、豊かな土になるんだよ。その栄養で、木はまた新しい芽を出して、たくさんの葉を茂らせる。そうやって、自然は何ひとつ無駄にしないで、幸せを繋いでいくんだ」 「幸せを、繋ぐ……」 噛みしめるように呟くせつなに、圭太郎は力強く頷いてみせる。そして少しおどけた調子で、こう言った。 「そうだ。落ち葉のご馳走が食べられて、虫たちも喜ぶ。きれいな花や若葉や、こ~んな見事な紅葉が見られて、僕たちも喜ぶ。それに当然、木も喜ぶ。みんなで幸せ、グッドだよ~! ってね」 圭太郎がズボンの落ち葉を払って立ち上がり、得意そうな顔で、せつなに右手を差し出す。 (お父さん、それを言うなら、幸せゲット、でしょ?) そう口に出して言うのは恥ずかしくて、せつなはただクスッと笑って圭太郎の手を取り、立ち上がった。 二人でまた落ち葉を踏みながら、元の道へと戻る。ラブとあゆみは、坂の少し上の方で立ち止まっていた。どうやら薄くて柔らかなモミジの落ち葉を、日に透かして遊んでいるらしい。 「この木たちに比べれば、僕なんか、まだまだだなぁ!」 突然、圭太郎の声に熱がこもったのを感じて、せつなが目をパチクリさせる。 「ああ、ごめんな、せっちゃん。つい、仕事のことを考えちゃってね。軽くて、涼しくて、水にも強くて、被っている人が幸せになれるような最高のカツラを作りたいって頑張っているけど……それだけじゃない、地球にも優しいカツラを作りたいって思ってるんだ。いつか、必ずね」 まるで少年のようにキラキラと光る目をして、圭太郎がまた、ニヤリと笑う。 (お父さんって、お仕事の話になると、何だかダンスの話をしているラブそっくりになるのね) せつなはしばらくの間、黙って自分が踏みしめる落ち葉の音を聞いていたが、やがて意を決したように、顔を上げた。 「お父さん」 「ん?」 「私……お父さんならきっと、作れると思うわ」 言ってしまってから、モミジにも負けないくらいの真っ赤な顔で俯くせつな。その頭に、圭太郎はそっと手を置いて、ポンポンと二回、優しく叩く。 「ありがとう、せっちゃん。そうさ。まだまだ、挑戦はこれからだからな」 やっぱり熱く言い切る圭太郎の顔を、せつなはそろりと上目遣いに見上げて、うん、と恥ずかしそうに頷いた。 やがて、坂道も終わりに差し掛かった。少し先で待っていたラブとあゆみも一緒に最後の急勾配を上りきると、目の前がぽっかりと開ける。そこに広がる景色に、せつなは思わず息を飲んだ。 眼下に見えるのは、コンクリートで囲まれた小さな湖だった。水力発電のための人工湖だと、圭太郎が説明してくれる。その湖の向こう側に見える山肌は、まさに自然が描き上げた、一枚の絵だった。 黄色に、褐色。朱色に、深い赤。そしてところどころに見える、渋みを増した緑――。 まるで空の巨人が、山というキャンバスに、気まぐれに絵具を落としたかのよう。様々な色彩が主張し合い、でも不思議と調和を保って引き立て合っているその姿を、小さな湖面がくっきりと映し出す。 まさに山と湖とが一体となった光景が、燦然たる輝きを持って迫って来る。 「きれいだね。せつなに見せたかったんだ、この景色」 声も出せず、ただ景色を食い入るように見つめているせつなの腕に、ラブが嬉しそうに腕を絡めた。せつながやっと呪縛から解かれたように、深々と息を吐き出す。 「う~ん、まさに錦繍だな」 「きんしゅう?」 まだ夢見心地の顔で、圭太郎の言葉をオウム返しに呟くせつなに、あゆみと圭太郎が、揃ってニコリと笑った。 「まるで豪華な錦みたいに、色鮮やかで美しいってことよ」 「ああ。本当はこっちが本家で、錦の方が真似したんだと思うけどね」 笑顔で説明してくれる二人の顔を交互に眺めてから、せつなはやっと笑顔になって、もう一度自然の錦を見つめる。 ふと、新たな疑問が泡のように心に浮かび上がった。 「ねえ、お父さん」 優しい視線を返す圭太郎の顔を見つめて、せつなはもう一度心にある問いを投げかける。 「私たちは、こんな景色が見られてとっても幸せだけど、紅葉って木にとっては、一体どんな良いことがあるの?」 「あら。そう言えば、そんなこと知らないわね」 「ホントだ。ねえ、お父さん。知ってる?」 あゆみとラブにも期待に満ちた眼差しを向けられて、圭太郎は困った顔で頭を掻く。 「うーん、それはね。実はまだ、ハッキリとは分かっていないらしいんだ」 「あ、そうなの」 「へぇ、そうなんだ」 少し残念そうなせつなと、意外そうに目を見開くラブ。そんな二人を見つめて、圭太郎の声が、また熱を帯びる。 「でも、これだけは言えるぞ。まだ人間には分かっていなくても、もちろん木にとっても何かきっと、とっても素敵なことがあるのさ。自然の営みに、無駄なことなんてひとつも無いんだから!」 「う、うん……」 気圧されたように頷くラブと、それを聞いて嬉しそうに微笑むせつな。圭太郎は大真面目な顔で、最後のダメを押す。 「ほら、ラブがいつも言ってるだろう? みんなで幸せ、グッドだよ~! ってね」 「お父さぁん、ゲットでしょう? もう、肝心なところで間違えるんだから」 苦笑いをするあゆみの隣りで、せつながクスクスと笑い出す。それを見て、ラブもあゆみも、そして圭太郎も、一斉に笑顔になった。 「さあ、この景色を見ながら、お弁当にしようよ!」 ラブが、再び目をキラキラさせて三人の顔を見渡す。その言葉を聞いて、せつなも嬉しそうに頷いた。 二人が下げているお弁当の中身――それは、ラブとせつなの特製ちらし寿司だった。 薄く切った酢蓮根に、甘辛く煮た椎茸、焼いてほぐした秋鮭の身。ラブが色良く焼き上げ、せつなが糸のように細く切った錦糸卵。彩りに、さっと湯がいて食べやすく切ったホウレンソウ……は、今日は可哀そうだから小松菜を使って、酢飯の上に鮮やかに盛り付けたもの。 あゆみが母から教わったものを、ラブに教えてくれた料理だと言う。 (ラブはきっと、この景色を思い浮かべながら作ったのね。お父さんとお母さん、どんな顔するかしら) せつながそう思いながら、もう一度湖の向こうを眺めたとき、得意げなラブの声が、耳に飛び込んできた。 「今日のお弁当は、あたしとせつなが愛情パワー全開で作ったからねっ! お父さんもお母さんも、開けてびっくりだよ~。あのね、すっごく綺麗な……」 「ちょっと、ラブ! 駄目よ、全部しゃべっちゃ。お父さんとお母さんを、びっくりさせるんでしょう?」 せつなに睨まれて、ラブが慌てて口をつぐむ。それぞれがまるで違う色を持っているのに、何故か双子のような二人の娘。その輝きに、圭太郎とあゆみはそっと目と目を見交わして、幸せそうに笑った。 ~終~
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/448.html
「特別な夜だから」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY 今夜はクリスマスイブ。桃園家でのクローバーのクリスマスパーティーは 大盛況の内に幕を閉じた。 因みに桃園夫妻は親孝行な娘達の画策…もとい心暖まる進言より、 ラブが産まれて以来初めての二人きりのクリスマスデートに出掛けている。 そんなワケで、四人でのパーティーは大人の目を気にする事なく 適度にハメを外して楽しんだ。 そして友達として思う存分楽しんだ後は、今夜は特別な夜。 恋人達の時間に突入するべく、まだ名残惜しさを引きずりながらも解散。 後はそれぞれのカップルに別れての聖夜が始まる……。 はずだったのだが。 「せつなっ!ちょっと待った………って、行っちゃったよ…。」 ラブの止める声も届かない内に、アカルンで飛んで行ってしまったせつな。 恐らく、今あの二人は忘れ物どころじゃないと思うんだけど……。 (あーあ……。知らないよ…。) と、思った次の瞬間、 「きゃぁああぁーー!!」 「!!!」 ガシャガシャガシャー!と言う派手な音と共に、せつながまだ片付けの 済んでないダイニングテーブルの上に落ちて来た。 一応使用済みの食器なんかは洗ったが、テーブルの上には ラブが明日食べようと残していたケーキの残りが置いてあったワケで……。 モロにケーキの上に落ち、足をクリームまみれにして呆然するせつな。 そのせつなを見て、これまた呆然とするラブ。 我に返り、とっさにテーブルから降りようとするせつな。 これまた、一瞬遅れて我に返ったラブが慌てて制する。 「待った!降りない!降りちゃダメ!!降りるな!!被害が広がる!!」 せつなはストップモーションの様にピタリと静止する。 ラブはせつなに尻餅を付かせるような格好にして、被害状況を調べる。 白い脛と内腿、ラブが頼み込んで着てもらったミニスカサンタの 衣装のスカートにもクリームが付いている。 取り敢えず、下敷きになっている皿やら回りを綺麗にしていると…… 「あの……。ゴメン……。自分でやるから…」 「うーごーかーなーいー!じっとしてる!ホラ、これも脱いで。」 「あっ!ちょっと!」 「ここで全部始末しちゃった方が早い。 もーう!ケーキ明日のお楽しみだったのに。」 しゅんとするせつなから赤い衣装を脱がせ、あっという間に下着姿に してしまった。 「あたしが良いって言うまで動いちゃだめ!」 ラブが服を始末したり飛び散ったクリームを拭いたりしている間、 せつなは下着だけでダイニングテーブルの上に捨て置かれると言う 放置プレイに晒される事になった。 かなり……シュールな光景だ。 「さて、これで後はせつなだけだね。」 ホッとしてせつながテーブルから降りようとした瞬間…… ぺろり! ラブがせつなの足に付いたクリームを舐めた。 「やっ!ラブっ!」 「だーかーらー、動かないの。」 「や、やめて…。汚いわ……」 「もったいないよ!このケーキ美味しかったのに!」 ペロペロとクリームを舐め、スポンジの欠片をこそげ取っていくラブの赤い舌。 それが内腿に侵入して来ると、せつなの皮膚の下にくすぐったさとは違う、 むず痒い感覚が産まれてくる。 せつなの体がカァっと火照り、冷たいクリームが緩んで白い肌を流れる。 ラブの熱い舌が濡れたビロードの様に這い回り、その感覚に 体の奥から熱が降りてくる。 「ね、ねぇ、もういいでしょ?洗ってくるから…」 放して?そう言って足を掴んだラブからせつなが逃れようとする。 するとラブは上目遣いにせつなを見つめ…… 「ねぇ、せつな。何見たの?」 途端にただでさえ熱くなっていたせつなの体温が急上昇した。 薄暗がりに浮かび上がる美希の白い体。焦点の定まらぬトロンとした瞳。 そんな美希をこの上なく愛しそうに髪を梳き、微笑む祈里。 祈里の微笑みは慈母の穏やかさを湛えているのに、何故か 瞳に猛禽類のような獰猛な光がちらついているように思えた。 その爪で艶かしい獲物に食らい付き、そして捕えられているはずの獲物は どこか恍惚の表情を浮かべている。 白い喉笛に牙が突き立てられるのを、今か今かと待ち焦がれているような。 わたしも、あんな顔をいつもしているのだろうか……。 そして、ラブも………。 「い、言えないわ……。そんな…!」 「ふうん……。つまり、言えないような事、してたんだ?」 「……!!ーーあっ、あんっ!あぁっっ!」 ラブが下着の上からせつなの秘部を甘噛みする。 布越しに、尖った快感の集中する突起を歯でしごく。 横から指を入れ、濡れ具合を確かめる様に覗き込んだ。 「あっ!イヤっ……見ないで……」 「今さら恥ずかしがらなくても。 せつながエッチなコだって事くらい知ってるよ。」 「やっ……!やぁあん!!」 下着の中でくりくりと突起を捏ね回す。 すぐには昂らないように、桃色の真珠を包む包皮の上から揉み込む。 「ねぇ、せつなは気が付いた?」 「ーーんっ、んぅ……?」 「美希たん、トナカイさんの下、何も着てなかったんだよ。」 「ーー?ーえっ?」 「ブッキーがねぇ、やたら美希たんのお尻のあたりチラチラ見てたの。 何でかと思ったらねぇ…!」 少し破れてたんだ。そこからね…… そりゃ、あの格好で来て帰るしかないよ。 「まったく、あの二人もよくやるよねぇ。 人んち来るのに何考えてんだか。」 下着の中の悪戯を止める事なく、ラブはせつなの様子を窺う。 上に手を伸ばし、ブラを手探りでずらしながらせつなの耳元で囁く。 「あたしのお願いなんて可愛いもんでしょ?」 今日せつなが着けているのは、赤いレースが繊細なブラとショーツの一揃い。 乳房を包む部分は殆ど透けそうなレースのみ。 かっちりとしたワイヤーの入らない、自然な丸みが出る作りだ。 下も同じく淡い茂みを辛うじて隠す程度の布を細いリボンが繋いでいる。 殆ど下着としての用をなさない、扇情的で見る者を挑発する為だけの物だ。 「今夜は特別な夜だから。」と、せつなを拝み倒して付けて貰った。 全身を桜色に染めてモジモジと俯くせつなは、 その場で食べてしまいたいほど可愛くいやらしかった。 今まで美希と祈里の目を盗んで、物陰でスカートを捲ったり、 胸元を覗き込むだけで我慢していたんだ。 (脱がせちゃうの惜しいけどね………。) 「ほどくよ…?」 乳房を荒々しく揉みしだき、しこり立った乳首の先端に爪を立てる。 耳たぶに舌を這わせながら、シュル……と 少女の最後の砦が暴かれる。 「…………っあ…………」 膝に手を掛けると弱々しい抵抗の後、驚くほどすんなりと せつなの恥じらいは武装解除してしまった。 ふっくらと充血した花弁がほころぶように 花開き、その中心にたっぷりと蜜を湛えていた。 その上に息づく蕾は快感への期待に震え、 初々しい桃色の膨らみを覗かせている。 「可愛い……。ねぇ、食べちゃってもイイ?」 ラブは腿に一掬い残しておいたクリームを、その蕾に塗り付ける。 「はぁっ、やっ…あ……!」 「ふふっ……、いただきまぁす。」 パクリ!と口に含み、ねぶり回しながら苛め抜く。 硬く、柔らかく、せつなの一番感じる部分が意地悪な舌で好き放題になぶられる。 羞恥と快感がせめぎ合い、せつなの内側から心身を炙る。 泣きたくなるほどの愉悦が駆け巡り、羞恥を快感が溶かして行く。 「あんっ、あんっ、あんっ、あぁぁ、はぁ…、いっ…んあっ、あっ……」 涙を飛ばしながら激しく頭を振り、ラブの舌が突起を捉える度に せつなはビクンっビクンっと腰を跳ねさせる。 ふるふると小刻みに走る震えが、せつなの絶頂が近い事を知らせてきた。 つつ……、と愛液と唾液の混じった糸を引きながら、ラブの舌と せつなの快楽が離れる。 「どして?」そう目で訴えながら、 せつなはハァ、ハァ…と大きく胸を上下させる。 天国へ登り詰める寸前でお預けされ、行き場を失った欲望が 子宮を切なく締め付ける。 「せつな、これからどうしたい?」 ラブは両の乳首を摘まみ上げ、指の腹で敏感な先端を摩擦する。 左右交互に軽く引っ張っては放し、チロチロと舌先でくすぐり、 時々強く吸いつきながら甘噛みする。 「はぁっ…んぅ、あ…っ…ぁう…ンッ!」 せつなはラブの頭を掻き抱きながら身を捩る。 乳首への甘美な刺激が、ますます足の間に火を灯し、悦びを教え込まれた 幼さを残した体を責め苛む。 「ねぇ、言って?せつな。次はどうして欲しい?どんな風にイキたい?」 せつなの好きなように、してあげるから。 「………ーっ、な、中にも、…欲し、いの……」 「何を?」 「……ら、らぶの指、………お願い、奥…まで……」 ラブはうっとりと笑み崩れ、せつなの唇に貪りつく。 「ンッ…んぅぅ…、らぶぅ…、ら…ぶ」 甘く蕩けた声でせつながすがり付く。 乳首を弄んでいた指が脇腹から鼠径部を撫で、濡れそぼった 花弁を掻き分ける。 「んっ!ふぅっ……!ぅんんっ!」 唇を塞がれたまま、せつなが指を誘い込もうと腰を揺らす。 ラブは指を2本、一気に奥まで貫きながら掻き回し始める。 「ーーふあっっ!はぁああぁ…、あっ!あっ!」 「気持ちイイとこ、全部触って欲しいんでしょ? せつなは欲張りだね!」 ぐちゅっ!ぐちゅっ!とキツくすぼまった秘孔を引っ掻くように 中指と人差し指を抜き差しする。 放って置かれた屹立仕切った蕾を摘まんで捻る。 舌は乳首を舐め回しながら、唇で乳房に赤い印を刻んでいく。 「あーーっ!あぁぁ…んっんっんっ!!ダメっ、いゃあぁ!」 「イイの?せつなっ、気持ちイイ?」 「ああっ、ああっ、もうっダメっ!ダメ…あっ、ーーー……っ!!」 ガタガタとテーブルが鳴り、せつなが大きく仰け反る。 緊張を繰り返した肢体が、やがてしどけなくラブにしなだれかかる。 「………どして?……どして、こんな……っーー!」ラブの肩口に額を擦り付け、せつなが涙混じりの声を漏らす。 「んー、ゴメンね…。そんなにイヤだった?」 「……イヤじゃ…ない、けど…。」 「今夜は特別な夜だからって事で、許して?」 「そんなに、特別なの……?」 「そーだよ。」 だから美希も普段なら絶対しないような事、してたでしょ? 大事な人を喜ばせたいから。 「ね、せつな。部屋、行こうか? あたしまだまだ、せつなを気持ち良くしたい。」 抱き締めたせつなが、ふるっ、と震える。 「アカルン……、私の部屋へ……。」 暗く冷えきった部屋のベッドは火照った体の熱を容赦無く奪う。 でも大丈夫。すぐに温かくなるから。 だって今夜は特別な夜。恋人達の時間は、まだ始まったばかり。 ~おまけ~ 「ねぇ~、美希ちゃん。機嫌直してよぅ。イイじゃない、 真っ最中じゃなかったんだし。一瞬だったし。」 「祈里は服着てたじゃない!それに、それに…バッチリ裸は見られた!」 「まあまあ、きっとせつなちゃんもラブちゃんにお仕置きされてるから。」 「何でそんな事分かるのよ…?」 「うふふー、見ちゃったんだ。せつなちゃんね、 すっごいエッチなパンツ穿いてた。」 「……いつ、見たの?」 「キッチンでね、ラブちゃん達がケーキの用意してたでしょ? ラブちゃん、せつなちゃんのスカート捲っておしり撫で回してた。」 「……………。」 「今度会ったらその事からかってあげればいいんじゃない?」 「………。」 「だからね?美希ちゃん、せっかくの夜なんだからさ……。」 「ーーーっあんっ!祈里ぃ……。」 「美希ちゃん……、可愛い……。」 後日、馬鹿正直にその事を突っ込んだ美希。 しかし、逆に裸トナカイを突っ込み返され、盛大な自爆を遂げた。 美祈25は、せつなが見た二人のお話(R18)
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/513.html
三人でおみくじ/一六◆6/pMjwqUTk 「うわぁ、やっぱりお正月は人が多いよねっ! この神社にこんなに人がいるところなんて、お正月以外には見たことないよ~」 「こら、ラブ。そんなにはしゃがないの! ここに初詣に来るのは初めてじゃないんだから」 「だって、美希たん。いつもは家族で来るから、三人で来るのは初めてだよぉ。あ! 綿あめの屋台が出てる!」 「ラブちゃん、まずはお参りをしてからね。ほら、あそこで手を洗って」 はしゃぎまくるラブを、呆れた顔でたしなめる美希。苦笑しながら、準備良くコートのポケットからハンカチとお賽銭用の小銭を取り出す祈里。 中学一年生の三人は、初めて三人だけで、地元の神社に初詣にやって来た。 三人それぞれに何事かを一心に祈ってから、お正月だけは開く社務所で、お守りや破魔矢を見る。そのうちラブが、おみくじを引こうと言い出した。 「せーのっ!」 神社の境内の隅で、三人同時に自分のおみくじを開く。 「やったっ! あたし大吉!」 「あ、ラブちゃんも? わたしも!」 嬉しそうに声を上げる二人に、美希は目を丸くする。彼女の手の中にあるおみくじは……これまた大吉。三人引いて三人とも大吉なんて、この神社のおみくじには大吉しか入っていないのか? しかし一瞬浮かんだその疑問は、あちこちから聞こえてくる声で、すぐに打ち消された。 「お母さん、吉だって。これって、いいの? 悪いの?」 「お前、中吉か。いいなぁ。俺なんて末吉だよ~」 (別に、みんながみんな大吉ってわけじゃないのね。とすると、やっぱりアタシたちって、今年は揃いも揃って運がいいってことなのかな……) 「どしたの? 美希たん」 「ひょっとして、あんまり良くなかった?」 心配そうなラブと祈里の顔に、美希はハッと我に返った。 「そ、そんなことないわよ。アタシも大吉だったわ」 「えーっ、その割りに反応遅かったけどぉ? ちょっと見せて」 いつになく疑わしげなラブに、美希はしぶしぶ手に持ったおみくじを見せる。 「うはぁ、ホントだ! 凄いね、今年は三人揃って幸せゲットだね!」 打って変わって底抜けの明るさを放つラブの声に、美希もようやく笑顔になる。が、今度はやけに得意そうな声が聞こえてきて、再び顔が引きつってきた。 「なになに? 勉学! 怠り無く精進せよ。うーん、まぁ頑張れってことだよねっ、美希たん。失せ物、って何? なくし物? えーっと、遅かれど出る。良かったね! それから……いえ……いえうつり? 北は凶。あ、北の方に引越ししちゃダメなんだって。やっぱり寒いってイメージだからかなぁ。それからぁ、れんあい……」 「ちょっと、ラブ! なに人のおみくじ勝手に読んでるのよっ! アタシ別に何もなくしたりしてないから。それに、勝手に人を引越しさせるんじゃないわよっ!」 美希は自分のおみくじを引っ込めて、代わりにラブのおみくじを強引に三人の目に触れさせる。 「ほらぁ、ラブのだって、いろいろ書いてあるじゃない。勉学、ただひたすら精進せよ。これって、とにかく必死で頑張らないと知りませんよ、って意味なんじゃないのぉ?」 「ええっ!? 美希たん、そんな殺生なぁ!」 「まだあるわよ。争い事。勝ち難し、退くが利」 「ど、どういう意味?」 「えっと、喧嘩したって勝てなくて怪我をするだけだから、意地になって何度も向かって行ったりしないで、さっさと逃げなさい、って意味ね」 「とほほ~。ブッキー、こんな短い言葉なのに、意味はそんなに長いのぉ?」 「それからぁ、待ち人は……」 ラブの泣き顔にいたずらっぽく微笑んでいた祈里が、その次の美希の言葉を聞いて、急に驚いた顔をして自分のおみくじを見た。 「わたしのも……。待ち人って、良いとされている方角はラブちゃんと一緒。しかも、必ず来るって」 「えっ? アタシのは……多少遅かれど来る。あっ、方角は二人と一緒だわ」 さすがにここで三人、顔を見合わせる。 「全員……同じ方向から待ち人がやって来るのかな」 「まさか、三人揃って? あ、でも美希ちゃんは“遅かれど来る”なんだから、一緒には来ないのかしら」 「え~……どうしてアタシだけ遅いのかしら。失せ物も、遅かれど、って書いてあるし」 「美希たん、なくし物なんて無いって言ってたじゃん」 「そ、そうだけど、書いてあったら気になるじゃない!」 ひとしきり騒いだ後で、改めて顔を見合わせる三人。 「でもさぁ、何だか不思議だよね! 揃って大吉だっただけじゃなくて、こんなところに共通点があるなんて」 「そんな呑気なこと言って~。ラブのが一番意味深じゃない? 心して待て、なぁんてさ」 無邪気な笑顔を見せるラブに、わざとらしく真面目な顔を作ってみせてから、美希はさっきから気になっていたことを、祈里に質問してみた。 「ねぇ、ブッキー。そもそも『待ち人』って何? 待っている人、っていう意味?」 さすがに即答は難しかったのか、祈里は鞄の中から小さな辞書を取り出す。 「えーっと……『待ち人』っていうのは、『何らかの意味で、来て欲しい、会いたいという出会い全般に関する人のこと。自分の運命を導く人。運命の相手』だって」 「運命の相手って……ひょっとして、彼氏とか!?」 「か、彼氏って、美希ちゃん……。今年中に彼氏ができるなんて、二人はともかく、女子校のわたしには絶対無理だから!」 「あはは、冗談よ、冗談。そもそも『恋愛』っていう項目が別にあるんだから、そうとは限らないんじゃない?」 心なしか饒舌になっている美希と、いつになく顔が赤くなっている祈里。そんな二人をよそに、ラブは目をキラキラさせる。 「運命の人かぁ。きっとあたしたちそれぞれにとって、すっごく大切な、すっごく素敵な人だよね。どんな人なんだろう……。なんか、そんな人が現れるのかもって思っただけで、今年も幸せゲットって感じ」 ラブの言葉に、美希も祈里も顔を見合わせて、ニコリと微笑んだ。 「そうね。アタシたちの運勢、今年は完璧だもの」 「うん。きっと素敵な年になるって、わたし、信じてる」 ☆ ☆ ☆ あれから二年。 「穏やかなお正月になって良かったわね」 慌ただしい昨日までとは、空気まで違って感じられる元日の朝。美希はにこやかに、傍らの親友を見やる。 「ええ、ホントに」 同じくにこやかに答える祈里は、山吹色を基調にした可愛らしい着物姿。かく言う美希は、遠目には黒に見えそうな濃紺の地に、大ぶりの花模様をあしらった着物を大人っぽく着こなしている。 二人が向かっている先は、四つ葉町にある、あの神社だ。 「それにしても、あの神社に揃って晴れ着でお参りに行ったら、きっと目立つわね」 ちょっと肩をすくめてみせる美希に、祈里は相変わらずのんびりとした口調で返す。 「だって、今日は特別だもの。美希ちゃん、ちゃんとアレ、持ってきた?」 「もちろん。ちゃんと『失せ物』にならずに仕舞ってあったわよ」 美希と祈里は、互いに小さな細長い紙片を手にして笑い合った。 あの神社に、みんなでお礼参りに行こう――そう言い出したのはラブだ。 去年もみんなで初詣に行ったものの、戦いやその後のダンス大会やら様々なごたごたで、三人ともあのおみくじのことは、きれいさっぱり忘れていた。 今年はぜひともみんなでお参りに行って、ちゃんとお礼を言って来よう。そして、三人のおみくじを神社の木に結んでこよう。そう提案したラブの気持ちは、そのままみんなの気持ちでもあった。 「あ、来たわ」 向こうから、二人の少女が小走りで近づいてくる。 淡い桃色の地に小花を散らした可憐な着物を着たラブと、もう一人。 エンジ色に金の縫い取りが入ったあでやかな着物姿で、着物に負けないくらい晴れやかな笑みを浮かべている少女は――。 三人のおみくじに共通して書かれていた方角を示す文字をその名に持った、三人の大事な、『待ち人』だった。 ~終~
https://w.atwiki.jp/bdfghedbhgd/pages/106.html
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/331.html
二人ぼっちのクリスマスイブ~たまには、こんな聖なる夜~/一路◆51rtpjrRzY 照明を落とし、キャンドルを灯した薄暗い部屋の隅には、色とりどりのオーナメントに飾り立てられた小さなツリー。 いちごと生クリームでデコレーションされたケーキを中央に、テーブルの上にはチキンやジュース、それとノンアルコールのシャンパンが置かれて、お揃いのグラスが二つ。 それを手に取り、お互いにちょっと傾け、縁をカチン!と合わせて、乾杯。 今この部屋にはあたし達二人だけ……そう、こう言ってしまえば理想に描いた通りなのよ……ロマンチックこの上ないものね。 ただ一つだけ、問題なのは――……。 あたしの気持ちも知らないように、パパパーン!!と部屋に派手に響き渡る音と、舞い散る紙テープ。 「メリークリスマス!美希たん!!」 クラッカーを手にした彼女はそう言って、にへー、と笑った。 ……そう、唯一にして最大の問題は、あたしが今一緒にいるのは、夢見てた甘い想像とは違って、山吹祈里―――ブッキーじゃなく、彼女―――桃園ラブだって事だ。 あたしは笑顔のラブに言葉を返す代わりに、ノンアルコールシャンパンの注がれたグラスを口もつけずにテーブルに置いて、肩を落とし、溜息を一つついた。 今日は十二月二十四日、つまり、恋人たちが愛を確かめ合う、聖夜であるところのクリスマスイブ。本当なら、ブッキーと一緒にムードのある素敵なお店で祝うはずが、生憎とここはラブの部屋。 「もー!なんか暗いよ、美希たん!ホラホラ、メリクリメリクリ!」 「……あのね、厳密にはメリークリスマスはまだ早いでしょ?今日はイブなんだし」 「チェ、ノリが悪いんだからー。ホラ、せっかくのイブなんだから、笑顔で、ね!?」 両手の人差し指で、自分の唇の両端を持ち上げるラブ。あたしはそんな彼女を横目に、もう一度大きく、憂鬱な吐息をつく。 笑える訳ないじゃない………そりゃノリも悪くなろうってもんでしょ………。 だって、あたしが綿密に計画していたクリスマスイブの予定が、全部おジャンになっちゃったんだから。 ―――どうしてこうなってしまったのか―――それは、イブ直前、先週の金曜日に遡る。 「美希ちゃん……その……く、クリスマスイブの事なんだけどね……」 今年最後のダンスレッスンの後、ラブ達と分かれて、ドーナツカフェでテーブルを挟み、二人でお茶をしていた時、俯き加減にブッキーは小声で話し出した。 「あ、イブ?そうね、忘れてた……もう来週だもの……今年はどうしようか……」 あたしは迷ってるふうに彼女にそう返した……けど、それはとぼけてみただけで、本当はもう、先月のうちから計画を立てていた。 ブッキーへのプレゼントはどうしようか、今年はちょっと奮発して、大人っぽく、洒落たお店でお祝いするっていうのも……などと、話題のデートスポット特集やらを雑誌で必死にチェックして、既に全ては支度済み。その日の為のあたし自身の準備にも抜かりはなく、着ていく服やアクセサリー、さらには少しだけ背伸びした下着まで用意して―――あ、ご、ゴホン!!ほ、ホラ、やっぱり何事もあたしらしく「完璧!」でないとね!! その為に、幾つか入っていたモデルの仕事まで必死に頭を下げて後日に回してもらい、冬休みには海外でも一緒に、というママと和希の誘いを断り……どれだけ苦労し、かつ涙を飲んだことか……。 でも全てはブッキーと一緒に過ごす聖夜の為だもの。そう考えたら、これくらいの事は、ね。 「……あ、まだ何も考えてなかった?」 「んー、そうねー」 素知らぬ顔で湯気の立つ紅茶のカップを口に運ぶ。ふふふ……こういうのもやっぱり恋の駆け引きには必要よね。ポーカーフェイスってやつ。 あたしはいざ当日になって、驚きで一瞬目を丸くしたあと、見る見るうちに満面の笑顔になって胸に飛び込んでくるブッキーの姿を想像し、思わず口元を緩めてしまいそうになる……っと、ダメダメ、あくまでも気付かれないようにしないと……。 あたしがそんな事を考えていると、目の前に座ったブッキーは、なぜかホッとしたように笑顔を浮かべた。 「―――良かった……実はね、心配してたの。もし美希ちゃんが何かイブに計画してたら申し訳無いな、って」 「―――え?」 「二十四日は、どうしてもお父さんの病院の手伝いをしなくちゃいけなくなっちゃって……お正月も近いし、駆け込み需要、って訳でもないんだけど、診察の予約がいっぱい入ってて………」 ちょ、ちょっと待って……そ、それじゃああたしの予約したお店や、プレゼントや、下着なんかは―――。 あまりのショックに声も出ないあたしを他所に、ブッキーは優しい声で。 「じゃあ、今年のイブは別行動だけど、わたしの事は気にしないで、いっぱい楽しんでね?」 ―――と、あたしにとってあまりに残酷な言葉を投げつけたのだった。 「美希たーん!おーい、人の話聞いてるー?」 ラブの声で、ふと我に帰り、ち、ちゃんと聞いてるわよ!と返事をして、慌ててセーターの袖で目を擦る……い、いけないいけない……回想してただけなのに、な、涙が出そうになってるじゃない!!こんなのラブに気付かれたら、なんて言ってからかわれるか、分かったもんじゃないわ……。 ……それにしたって、ラブは何ともないの?あなただって、本当なら今日は……。 「―――で、なんの話だったっけ?」 「ちょっとー、やっぱり聞いてなかったんじゃなーい!ヒドイよ、ずっと上の空でさー……クリスマスイブって言っても、取り立てて何かする事って思いつかないね、って言ったの!!」 「あ……んー、言われてみればそうね……お正月みたいに、カルタや福笑い、羽根付き凧揚げ、なんて定番の遊びもないし……」 「……でしょー?んふふ、でね、あたし、今日はちょっとしたものを用意してあるんだー」 怪しげな含み笑いをして、ラブはベッドの下から何やら大きな箱を取り出してきた。 「ジャジャーン!!これね、ツイスターゲーム、って言うんだって!!親密度を上げるのにはちょうどいい、ってミユキさんに聞いて、借りてきましたー!!これであたしと美希たんで、身体を密着させて、息を荒くしてくんずほぐれつしながら―――」 その台詞を最後まで言わせず、あたしはゴツン!!とラブの頭にゲンコツをうち下ろした。 「し、しないわよ!そんなゲーム!!何考えてるの!!」 「い、イタタタ……い、いいじゃん、美希たんとの仲を深めるのに……こんなのせつなが居る時は出来ないんだからさー……」 ……全然いつもと変わってないじゃない……あたしと同じように、ラブもパートナーがいなくて寂しがってるとばかり思ってたのに……。 そう、ラブも今日は、本来ならせつなと一緒に過ごしていた筈だった。けど、なんでもラビリンスの復興が手間取ってて、せっかくのお休みが延期されちゃったんだって。 それで、予定が無くなってしまったあたしに、暇なら一緒にどう?と言ってきて……まあ、あたしも一人で暗くクリスマスをやるよりは、とラブの申し出を受けたんだけど……。 「あのね……せつながいなきゃいいってもんじゃないでしょ?常識的に考えなさい」 「考えてるよー。やっぱホラ、クリスマスイブって、世間的にもイチャイチャして過ごすイメージあるっしょ?だからあたしと美希たんで―――」 「誰とでもいちゃいちゃすりゃいいってもんじゃないでしょ?そういうのは恋人同士とか、夫婦とか、そういうカップル同士でやるもので、あたしとラブは単なる友人関係に過ぎないの」 「えー……なんとかそこを乗り越えてさ、肉体関け――」 「……いい加減にしないと、せつなに言いつけるわよ!?」 それを聞いた途端、興奮気味にテーブルへと身を乗り出していたラブが、む~、と不服そうに唸り声を上げて、座っていたクッションへと崩れ落ちる。 全く。誘われたのがあたしで良かったわよ。これが他の女の子だったら今頃どうなってた事だか。 ラブは意気消沈したかの様に、自分のグラスにシャンパンを注ぎ込んだ。あたしはたしなめるような強い口調で、そんな彼女に話し掛ける。 「他に何かないの?せめてクリスマスに相応しいイベントは?」 「……じゃあさ、ベッドで、登山して道に迷って裸で暖め合うって設定で、クリスマス遭難ゴッコ、なんてのは―――」 「クリスマス、って付けただけじゃないの!!」 ……あたしの握ったゲンコツが、再びラブの頭部を直撃する。 全く……!この子に取っては聖夜が性夜でしかないの!?そのうち天罰が下るわよ!? ラブは頭を撫で、恨めしげな声を上げつつ、グラスに入ったシャンパンをちびちびと舐めるように啜った。 「う~……ヒドイなあ、もう……だって、やっぱりクリスマスって言えばそういうもんでしょ!?」 「本当に怒られるわよ!?色んな人に!!」 「それなら、美希たんなら何かある?クリスマスにする事って何か……?」 「え!?あ、あたし!?そ、そうねえ……」 隠し芸、とか?……んー、それじゃ忘年会みたいよね……。何かクリスマスに関して、そういう話ってあったかな……。 頭の中にある、クリスマスにまつわるイメージを総動員して考える……クリスマスクリスマス……確か外国じゃ主の誕生を模した劇とかやったりするんじゃなかったかな……けど、日本じゃそういう光景も見かけないし……恋人や家族と過ごすもの、って言われてるけど……。 そこまで考えたとき、ふと頭の中を過ぎるものがあった。 「あ……」 「お、ナニナニ?何か定番の遊びとか思いついたの、美希たん?」 「ううん、別に遊びとかゲームとかいうんじゃないんだけど……」 あたしが思い浮かべたのは、子供の頃に読んだ、クリスマスにまつわる童話の内容だった。 「……ホラ、聞いたことない?クリスマスに、愛し合ってるんだけど、貧しい夫婦が、お互いにプレゼントを贈り合うっていうお話……」 「あ!それなんか知ってる!あれでしょ?旦那さんは懐中時計をすごく大事にしてて、んで、奥さんの方は美しい髪の毛を大事にしてるっていう―――」 そう、ラブの言う通り、お互いにお互いの大事にしてるものがあって、それに似合う物を贈ろうと、夫は自分の自慢の懐中時計を、妻の方はつややかな長い髪をそれぞれ売り払って、長い髪に合う櫛と、懐中時計の鎖を贈り合うっていう、暖かいお話。 その不器用な擦れ違いに、ちょっともどかしささえ感じるんだけど、お互いに何を失っても相手の事を思うっていうその一途さが、あたしは大好きだった。 「……いいお話だよね、アレ。何回も読み直したっけなー」 「ラブも?あたしもあのお話は好きよ。何ていうか、理想のクリスマス、って感じで……」 「理想のクリスマス、かあ……」 ラブはポツリとそう漏らすと、手にしたシャンパンのグラスをグイと飲み干す……まるで何かを誤魔化すみたいに、一気に。 「ぷはー。んー、でも、そのお話から今学ぶべきなのは、やっぱクリスマスって言えば何を置いてもプレゼント交換がメイン、ってとこなのかな?」 「何それ……台無しじゃない。……でも、クリスマスはプレゼント交換っていうのは、避けては通れないのかもね」 「んじゃさ、取り敢えずプレゼントと行きましょうかー。まだ日にち的には早いんだけど……」 再びベッドの下をごそごそしだしたラブに、そうね、と軽く相槌を返し、あたしも持ってきたバッグの中へと手を入れる。 互いに背中にプレゼントを隠して、クッションに座り直すと、ラブが軽くウインクしてきた。 「ほんじゃ、ちょっぴり時間の押してる、前倒しのクリスマスってことで……」 「なんか聖夜の有り難味がなくなる言い方ね、それ……」 「まあまあ……じゃ、せーの―――」 ハイ!という掛け声でプレゼントの袋を前に出すラブ。あたしもそれに合わせて、綺麗に包装されたプレゼントの小さな包みを差し出す。 「メリークリスマス、ラブ」 「メリークリスマス、美希たん……ね、さっそく開けていい?」 「勿論……じゃあ、あたしも……」 ラブのくれたプレゼントに掛けられた黄色いリボンを解き、ラッピングを丁寧に剥がす……ラブはといえば、あたしのプレゼントのラッピングをお構いなしでバリバリ破いてるけどね……あ~あ、せっかくの赤いリボンが……。 「……ね、ねえ、美希たん……これ、あたしには早すぎない、かな……?」 プレゼントの箱を開けたラブは、戸惑いの表情をあたしに向ける。 彼女の手にあったのは、あたしがあげたプレゼント―――鮮やかな赤い色の口紅――だった。 「そうね……ラブにはもっと淡いピンクとかの方がいいかも……もしラブがそれ塗ってたら、大人の真似した、おままごと中の小学生、って感じだしね」 「ヒッド―!!じゃあなんで―――」 「せつなに似合いそうでしょ、それ?」 あ!と声を上げて、俯き加減に考え込み、やがて顔を上げると、ラブは嬉しそうな表情を見せた。 「うん!きっと似合うと思う……ありがとう、美希たん!!じゃあさ、あたしのも開けてみてよ!」 「はいはい、えっと……」 ラブに促され、袋を開けたあたしの目に飛び込んできたのは、レモンイエローの……。 「……ちょっとラブ、こ、これは何よ……?」 「えへへー、さっすが幼馴染み!考える事は一緒だよね!」 「一緒って……あんたねえ……」 袋に入っていたのは、レモンイエローの……少し過激なランジェリーだった。 べ、べ、べ、ベビードール、っていうんだっけ、これ……う、うわ……す、スケスケじゃないの……。もしこんなのブッキーが着てたら―――。 「美希たん、ヨダレヨダレ!」 「ヨダレなんか垂らしてないわよ、バカ!!」 思わず顔を熱くしながら、ラブをぶつフリ。なぜかラブも顔を赤くしてて、キャッキャとおどけた様にベッドの上に退避した。 それからお互いに顔を見合わせ、プッ、と吹き出す。 「あはは……なんだかなー。これじゃあの童話とおんなじだね」 「ふふ、本当ね……お互いに今ここにいない人の為のプレゼント、なんて……」 二人でしばし笑いあった後、可笑しくて涙が滲んだ目を指で拭いながら顔を上げると、ベッドに胡座をかき、赤くなった顔に優しい表情を浮かべたラブと目が合った。 「……良かった……やーっと笑ってくれたねー、美希たん」 「え……?ラブ、あなた……」 ―――もしかして、あたしの事ずっと心配して―――? 「あ!!美希たん、あれ―――」 私の疑問の声を妨げるように、彼女は窓にかかったカーテンの隙間を指差した。釣られてあたしもそちらに目をやると、チラチラと白いものが見える。 「―――いつの間に……」 立ち上がって窓を開け、ベランダに出ると、まるでクリスマスケーキをデコレーションするように、四葉町に雪が降り積もっていた。 尚もハラハラと雪の舞い散る冬の夜空を見上げて、思わず興奮して振り返る。 「ね、ラブ、雪よ、ホラ!」 きっとラブならはしゃぎまくるだろうな、と振り向いたあたしの目に飛び込んできたのは、予想に反して、力なくベッドに横たわる彼女の姿だった。 「!!どうしたの!?」 「………」 返事も返さないラブのただならぬ様子に、慌ててベッドに駆け寄る―――息も荒いし、顔も真っ赤……まさかこの子、風邪でも引いたんじゃ―――。 不安になるあたしのもとに届く、ラブのピンクの唇から漂うほのかな香り。これって……。 テーブルの上にあったノンアルコールシャンパンの瓶を手に取り、ラベルをチェック―――やっぱり……ラブったら未成年でも大丈夫だよー、なんて言ってたけど、しっかりと微アルコールって書いてあるじゃない……。 途端に気が抜けて、はあ、と座り込み、ベッドにもたれ掛かる。全く……心配して損しちゃった。 「……な……ぁ……」 お酒の匂いと共に、ラブの口から呟きが漏れた。 どんな夢見てるんだろう、と、彼女の顔を覗く。変な寝言だったら、後でからかってやろうかな。 などと考えていたものの、ラブの顔に浮かんだ表情を見て、ハッとする。 「……つなぁ……せつな……」 さっきまでの明るい様子とは真逆に、彼女は切な気に眉をひそめ、目尻から一筋の涙を零していた。 それを見た途端、あたしの胸がきゅんと苦しくなる。 バカだな、あたし……そうだよね……淋しいのは、ラブだって一緒なのに……。 それなのに、ラブはあたしに気を遣って、一生懸命明るく振舞ってたんだ。本当は、今みたいに泣き出したいくらいだったろうに……。 「……ごめんね、ラブ。色々気がついてあげられなくて……それと……ありがとう……」 ベッドに腰掛け、安心させるように指でなるべく優しくラブの髪を梳き、何気なく窓の外を見る。 ―――ホワイトクリスマス、か。 もしもブッキーと一緒だったなら、それはそれは素敵なものだったんだろうけど……でも、たまにはこういうクリスマスイブも悪くないかもしれない。 ―――あの童話みたいに、あたしの事を思いやってくれる、優しくて、気兼ねなく接することが出来る、大切な人……幼馴染みの友人と―――親友と過ごす聖夜っていうのも。 と、唐突に、白に染められていた窓の外が赤い光に包まれた。な、何!?あ、まさかこの光って……!? カラカラ、とサッシが開き、サンタクロースに扮した少女と、トナカイの格好をした少女が……あたしとラブが、何よりも望んでいた二人の少女が顔を出した。 「ちょっと早いけど、メリークリスマス、美希」 「メリークリスマス、美希ちゃん!」 「せ、せつな?ぶ、ブッキーまで!?」 驚いて二の句も繋げないあたしに、せつなサンタは軽く肩を竦めると、にこっと笑ってみせた。 「ウエスターとサウラーがね、こっちでは今日は大事な人と過ごす日だって聞いたから、自分達に任せて、お前は四葉町に行けって……強引にね」 「わたしも、お父さんとお母さんがね、今日はもういいから、クリスマスを楽しんできなさいって……そしたら、せつなちゃんから連絡があって、わたしの家に前に使ったサンタさんとトナカイさんの衣装があったから、二人をびっくりさせよう、って……」 トナカイブッキーはぺロッと可愛らしく舌を出して、はにかんだように微笑んだ。 あまりの嬉しさから、今にもブッキーを抱きしめてあげたいところだったけど、あたしはそれをグっと堪え、寝ているラブを軽く揺さぶる。 あたしの事を思ってくれてた親友を差し置いて、自分だけ幸せに浸るなんて出来ないものね。 「ラブ!起きて!ホラ、本当にサンタさんが来たのよ!」 「………うにゃ……う~ん……邪魔しないでよぉ……」 「え!?な、何!?ちょっと!!」 いきなりラブの両手があたしの首に回され、ぎゅっと引っ張られる。 突然すぎて姿勢を保つ事も出来ず、あたしはそのままラブに覆いかぶさるような形になってしまった。 「…つなぁ……んにゃ……大好きだよぉ……もう離さないから……」 「こ、こら!やめなさいってば!!ふ、二人が見て―――ムグッ!!」 皆まで言えずに、柔らかな感触に塞がれるあたしの唇。 あまりの衝撃に狼狽えながらも、無我夢中でラブの手を振りほどき、あたしは身体を起こした。いいい今のって……まさか……き、き、キ……!? 唇を押さえるあたしの耳に、そのパニックすら吹き飛ぶような、冬の夜より冷たい声が響く。 「……美希ちゃん……一体どういう事なの……?今、確かにキス―――……?」 「ななな、何の事!?みみみ、見間違えよ!!ブッキー!!あ、あはは……」 「ラブ、今私が邪魔って言った……?……美希……私達がいない間、何があったのか、詳しく聞かせてもらないかしら……?」 「ちちち、違うの!せつな、ラブが言ってるのはそういう意味じゃなくて―――」 感情を押さえた声とは裏腹に、二人の周りは、地獄の業火もかくやと言わんばかりの、怒りの熱気が渦巻いていた。 ラブと過ごす、こんなイブも悪くない、なんて―――さっきそう思ったのは撤回しよう……。 あたしは迫りくる二人に怯えながらも、必死にラブの身体を両手で揺さぶっていた。 「ちょっとラブ!!起きて!!お願いだから、二人に説明を―――!!」 「うにゃうにゃ……サイコーのクリスマスイブ……ゲットだよー……」 冗談じゃないわ、こんな、こんなクリスマスイブなんて、あたしはもう二度と、金輪際、未来永劫―――………。 (お断りよ!!!!) あたしの悲痛な心の叫びをも白く覆い隠すように、聖夜の四葉町に、しんしんと静かに雪は降り続けたのだった。 了
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/471.html
「甘いものは別腹」/SABI 「うわーん・・・・・ひっく・・・・えぐ・・・・・」 ラブからの呼び出しで公園に来てみると、さっきから、この調子。 泣いてばかりで要領を得ない。ホント、何が言いたいんだか。 「ラブちゃん、そんなに泣いてちゃ分かんないよ。泣きやんで、ね」 泣いているラブと慰めるブッキー。 この光景、どっかで見たことある。って、何かある度にアタシやブッキーに泣きつくのは、いつものことか。 まあ、ラブが本当に落ちこんでいる時は食事も喉を通らないくらいだから、今回は軽症だって事なんだろう・・・多分。 いつもはラブにべったりくっついて離れない、せつなの姿が見えない。 もしかして、それが原因? 「ラブ、せつなは・・・・」 「せ、せつな・・・・せつながね・・・・・・うわーん」 「ラブちゃん、せつなちゃんがどうかしたの?」 「せつなが、せつなが・・・・ぐす・・・・」 だから、せつながどうしたのっていうのよ。 「せつなが実家に帰らせて頂きますって、昨日の夜・・・・ひっく」 「「はあ?」」 アタシとブッキー、随分と間の抜けた返事をしてしまったけど、それも仕方ないと思う。 だって、せつなの実家ってラブの家で、ラブの家にはせつなが住んでいる訳で。 えっとつまり、ラブとせつなは同居しているから、せつなには帰る実家などないはずなのだ。 説明している自分自身でもよく分からなくなってきたけど。 もしかして、ラブとせつなが喧嘩したのかしら。同居しているから、却って気まずくなるわよね。 それで、せつなが家出でも? 「せつながどこかへ家出でもしたの?」 「ううん、・・・今日、一緒に学校に行った・・・・・ぐす・・・」 再び泣きだしたラブをブッキーがなんとか宥めている。でも、なんとなく話は見えてきた。 せつなが突然実家に帰るって言い出したから、ラブがこうなったというわけだ。 だけど、二人が喧嘩している・・・・訳じゃないよね。 喧嘩しているんだったら、せつなからもアタシかブッキーに連絡が入るはずだけど。 本当に喧嘩しているというなら、心配なのはむしろ、せつなの方。 せつなの実家って良く分からないけど、桃園家に居づらいというなら、なんならアタシの家に来てもいいし。 とにかく、せつなを呼び出して、直接聞くのが早い。 リンクルンでせつなを呼び出そうとすると、ラブが必死に止めようとする。 「美希たん、ちょっと待って」 「ちょっと待ってって、このままじゃ埒が明かないでしょ」 「だって、せつなから別れようって言われたら、あたし・・・・・うわーん」 ・・・・ラブの涙腺は再び決壊したらしい。 数十分後、待ち合わせ場所にせつなが来た。 ラブがいると色々ややこしいというか、折角落ち着いたのにまた泣かれても困るので、別の所に移動させて。 ラブとは違い、外見上は普段のせつなと変わらない。 「せつな、単刀直入に聞くけど、ラブと喧嘩でもした?」 「ラブと喧嘩?」 せつなが不思議そうな顔をする。どうやら、ラブと喧嘩をしたという訳ではないらしい。 「だったら、何でラブに実家に帰るなんて言ったの?」 「ラブが浮気をしてるんじゃないかと思って」 「どうして、ラブちゃんが浮気をしたと思ったの?」 「だって、私が髪を切ったこと、ラブが気付いてくれなかったし」 「「はあ?」」 アタシとブッキー、随分と間の抜けた返事・・・・は前に言ったか。 髪を切ったことと浮気とどう結び付くのか分からないけど、というかその情報源、何処? ラブが浮気・・・ありえない。 せつなの一言でラブがあんだけ落ちこんでいるんだから、浮気の心配は絶対にないと思うわ。 それに、ラブとせつなは仲が良くって、人前でもいちゃいちゃする二人をいつも窘めているくらいだし。 何時の間にかラブがいて、誤解の解けた恋人同士、人目を憚らず・・・ だからそこ、人前でいちゃいちゃしない! 説明している自分自身でもよく分からなくなってきたけど、 ともあれ、ラブの心配もせつなの心配も杞憂だったってことだ。 心配して、損した。 はぁ~~ お腹の底から深い溜息が漏れてくる。 溜息をつくと幸せが逃げるっていうけれど、あの二人に振り回されて、どれだけの幸せが逃げていったのだろう。 まあ、せつなが来たことで、いっぱい幸せを貰ったからいいのだけど。 隣ではアタシと同じように、ブッキーが深い溜息をついている。 疲れた時には、甘いものが一番。 「帰り、カオルちゃんのとこ、寄ってく?」 「うん」 ラブとせつなの、甘い甘いノロケ話でお腹いっぱい。 だけど、甘いものは別腹、ってね。 了 ~おまけ 事件の真相~ その前日の夕方。 「おばさま、いつも、すみません」 「あらぁ、いいのよ。桃園さんちは家族同然だし、カットモデルなら大歓迎よぉ」 「ここにある雑誌、見てもいいですか?」 「いいけど、大人向けの雑誌よぉ」 「・・旦那の・・浮気・・・見破る方法・・・・・」 「恋人が自分のことに関心が無くなったら要注意よぉ、せつなちゃん」 「例えば、髪を切ったのに気付かないとかぁ・・・・・そんな時は、実家に帰るとか言ってぇ・・・・」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/505.html
蒼の喪失(後編)/一六◆6/pMjwqUTk 四つ葉町公園の一角に作られた、円形ステージ。 今まで四人が最も多く集まってきたこの場所に、少女たちは再び集う。 「みんな。今はダンスに集中しよう。互いの呼吸を感じて、息を合わせるの。 ミユキさんの言葉を、思い出して。」 ツインテールの少女は、そう言ってダンシングポッドをセットする。 キラリと光る瞳で仲間たちを見渡してから、彼女はゆっくりと立ち位置に付く。 四人の中で最も小柄な少女が、その隣に立つ。 祈るように頭を垂れ、胸の前でそっと手を組み合わせてから、彼女は静かに顔を上げる。 反対隣に立つ黒髪の少女は、何かを確かめるように、自分の足下をじっと見つめる。 やがてひとつ深呼吸をして、彼女は冷たい秋の空気を、その身に流し込む。 そして蒼い瞳の少女も、迷いのない足取りで、立ち位置に付く。 澄み切った高い空を見上げ、その目に一瞬やわらかな光を宿してから、彼女は目を閉じる。 軽快な音楽が、ステージに響き始めた。 蒼の喪失(後編) イントロに耳を傾け、カウントを取る。 ジャンプから、左右にステップ。 彼女に背を向け、すぐさま向かい合わせになる。 彼女の笑顔が、まだ固い。 でもその呼吸を、美希は手に取るように感じ、自分の息を合わせていく。 再びジャンプから、左右にステップ。 もう一度彼女と向き合い、そしてハイタッチ。 精一杯伸ばされた、彼女の手。 無意識に身長差に合わせた、美希の腕の角度。 四つの掌がぴたりと合って、タン、と澄んだ音をたてる。 その瞬間。 つぼみがほころぶように、彼女は笑った。 もう何十回、いや、何百回と四人で踊った曲。 何も考えずとも、身体はちゃんとリズムを刻む。そして、 何も考えずとも、身体はちゃんと覚えている。―――隣で踊る、彼女を。 間隔を詰め、肩を並べる。 瞬時に絡み合う、四人の腕。 美希から始まるウェーブが、彼女たちの間を駆け抜ける。 ステップ、スイング、ターン。 四人の右足が、軽やかに地を蹴る。 四つの掌が、空をつかもうとする。 それらが大きなうねりとなって きらめく。はねる。舞い上がる。 やがて、ひとつになったその呼吸が 大地の息吹となる。 彼女たちが奏でるメロディと共に 空は歌い、 彼女たちが刻むリズムに乗って 木々はざわめく。 秋の光が、四人の動きと溶け合い、ひとつになっていく。 そこに居るのは 美希でも、ベリーでもない。 せつなでも、パッションでも、イースでもない。 ふたつの―――いや、四つの無垢なる魂が、 触れ合い、感じ合い、共にそこにある。 もう何度目かもわからないフィニッシュ。 そのとき―――この瞬間が永遠のものになったのを、四人は感じた。 「・・・できた。」 ラブのつぶやきが、沈黙を破る。 「できた。できた。できたーっ!!」 歓喜はすぐさま四倍となって、少女たちの笑顔と共に、はじけた。 「なんかお嬢ちゃんたち、一皮むけた感じだね~。」 ワゴンの中から彼女たちが踊るのを見つめていたカオルちゃんが、感心した様子で、タルトに話しかける。 「そうかぁ?ここんとこ、結構大変なんやでぇ。お陰でわいも心配で、飯もノドを通らんのや。」 そう言いながらドーナツを頬張るタルトに、カオルちゃんはニヤリと笑い、いつもの調子で言った。 「へぇえ。でもドーナツだけは、どーなつたって、食べられるみたいだね~。ぐはっ!」 そのとき。昼寝から目覚めたシフォンが、おぼつかない足取りで立ち上がろうとして、ビクン!とその小さな体を震わせた。 彼女の額のマークに、黒い霧が立ち込める。その顔から一切の表情が消え、体の輪郭までぼやけてくる。 「ワガナハ・・・インフィニティ。ムゲンノ メモリーナリ。」 「うわっ!出た!」 タルトが慌ててオルゴールを回そうとして、勢い余って、テーブルから真っ逆さまに転がり落ちた。 「大丈夫か?兄弟。」 カオルちゃんに助け起こされたタルトの横を、インフィニティと化したシフォンが、つーっと空中を滑るように去っていく。 「シフォ~ン!」 何とかテーブルに飛び乗ってクローバーボックスを抱えたタルトは、急いでシフォンの後を追う。その異変に、ステージ上のせつなが気付いた。 「タルト?・・・大変!シフォンが。」 ステージの横を行き過ぎ、林の方に入っていこうとするシフォンに、四人が駆け寄る。 「シフォン!しっかりして!」 「シフォン!」 「シフォンちゃん!」 「タルト!急いで!」 「はいな。待っててや、シフォン!」 全速力で駆け寄ろうとするタルトの正面から、木の葉と共に、一陣の風が吹き付けた。 「ふふふ。見つけたわ、インフィニティ。」 そこに立っていたのは、氷のように冷たい微笑を浮かべた、大柄なひとりの女性。その両手がおもむろに前へと突き出され、手首がくるりと反転する。 「スイッチ・オーバー!」 ラビリンスの最高幹部、ノーザの出現だった。 「姿を現せ、ソレワターセ。」 彼女の手の中でぴくぴくと動く人型が、地面に投げつけられる。 たちまち黒いオーラが立ちのぼる。暗緑色の巨大な蔓がしゅるしゅると高速で伸び、絡み合って再び人型をなす。その胴体にぱっくりと開いた裂け目から、邪悪に光る、赤いひとつ目が覗いた。 「ソレワターセー!!」 「みんな、行くよっ!」 即座に伝説の戦士へと姿を変える少女たち。その中の一人、キュアパッションに、ノーザのあざけるような声がかかった。 「イース。あなた、まだこんなところに居たの?仲間に敵だと思われているというのに、よく平気な顔をして、一緒にいられるものねぇ。」 楽しげに含み笑いをしながら、ノーザはパッションの方へと歩を進める。 「帰ってきてもいいのよ、イース。少なくとも、ウエスター君とサウラー君は、あなたを歓迎するそうよ。」 「お断りよ!!」 力強く返すパッション。が、その声が完全にシンクロした四つの声として聞こえてきて、彼女は驚きに目を見張った。 三人の少女が、彼女をかばうように、ノーザの前に立ちはだかる。その中央に立つ、ひときわ背の高い少女の背中を見て、パッションの表情が、驚きからゆっくりと笑顔に変わった。 「あら?キュアベリー。あなた、イースをかばうつもり?ほかの二人に何を言われたのか知らないけど、残念ながら、イースがラビリンスだというあなたの記憶に、間違いはないわよ。」 「残念なのはどっちかしらね、ノーザ。」 からかうようなノーザの口調に臆することなく、ベリーは彼女を見据え、ニヤリと不敵に笑ってみせる。 「パッションが仲間だってこと、アタシにはちゃんとわかっているわ。」 「ふん、負け惜しみを。それはあなたたちの戦いを見れば、すぐにわかることだわ。」 「ソ~レワタ~セ~!!」 シフォンを追って、駆け出そうとするソレワターセ。 「行かせない!」 パインとパッションが走る。その触手に、アッパーを叩き込む。 ピーチとベリーが跳ぶ。その両肩に、体ごとぶつかっていく。 一瞬よろめいたソレワターセ。が、信じられない身軽さでくるりと宙返りすると、再びステージの上に立つ。 「ソ~レワタ~セ~!!」 「さぁみんな、行くよっ!」 ピーチの言葉に、四人は視線すら合わせぬまま、タン!と同時に地面を蹴る。 「プリキュア・クアトラブル・キーーーック!!」 たまらずステージから転げ落ちる巨体。それは、石造りのベンチの上に、どうと倒れた。 ぴしっ、とベンチに亀裂が走る。ソレワターセから放たれたオーラがベンチを飲み込み、ソレワターセの体を、ごつごつとした石の巨人に変える。 「ソ~~レワタ~セ~~!!」 突き出される巨人の両手。そこから大量の石つぶてが、四人に向かって放たれる。 「くっ!」 ベリーが両手でガードして攻撃をしのぐ。そして隣に立つ少女と、目と目を見交わす。 「パッション、行くわよ!」 「わかったわ、ベリー!」 同時に走り出す二人。目指す先は、立ちはだかる巨人の足下だ。 ベリーが右足を。パッションが左足を。寸分たがわぬタイミングでの、強烈な足払い! さすがのソレワターセもこれは避けられず、もんどりうって地面に転がった。 「な、何!?」 ノーザの顔が、驚愕と怒りにゆがむ。 「おのれ。仲間だという記憶も無いのに、何故そこまで・・・」 「言ったでしょ?パッションが仲間だってこと、アタシにはちゃんとわかってる、って。」 ベリーはそう言って、ノーザを見据える。 「アタシはね。彼女のことを、頭で理解してるわけじゃない。パッションは・・・せつなは、アタシの中に、ちゃんと居るのよ!」 闘志をみなぎらせたベリーがそう言い放つと、パッションも静かに言葉を続けた。 「あなたにはわからないわ、ノーザ。人と人との絆は、頭で考えるよりずっと強く、計り知れないもの。私はそれを、あなたから教わったのかもしれないわね。」 「くっ・・・言わせておけば、ぬけぬけと!」 ノーザの怒りに反応して、ソレワターセがようやく立ち上がる。 「ソレワターセー!!」 「ピーチ、今よ!」 ベリーの言葉に、今こそピーチの右手が高々と上がる。 「クローバーボックスよ。あたしたちに、力を貸して!」 天を目指してほとばしる光の柱が、ピーチの髪を逆なでる。 「プリキュア・フォーメーション!レディ・ゴー!!」 ベリーが、パッションが、ピーチが、パインが、いっせいに大地を蹴って走り出す。巨大な敵・ソレワターセに向かって。 「ハピネス・リーフ、セット! パイン!」 幸せを願う、パッションの心。それが赤く輝く一葉へと姿を変える。 風を切って届けられるその心を、パインは両手で大切に受け取る。 「プラスワン!プレア・リーフ! ベリー!」 祈りと信頼を込めたパインの心が、明るい黄色の一葉となり、パッションの心に寄り添う。 緩やかな軌道を描いて飛んでくる二つの心を、ベリーはしっかりと受け取る。 「プラスワン!エスポワール・リーフ! ピーチ!」 未来に希望を抱くベリーの心が、青くきらめく一葉となり、二人の心を支える。 空に向かって大きく放たれる三つの心を、ピーチは力強く受け取る。 「プラスワン!ラブリー・リーフ!」 大きな愛にあふれるピーチの心が、あたたかな桃色に光る一葉となり、三人の心を受け止める。 現れた幸運の四葉は天高く舞い上がり、巨大な光のベールとなって、ソレワターセの頭上へと降りていく。 「ラッキー・クローバー! グランド・フィナーレ!!」 少女たちの右手が、高く上がる。彼女たちの思いは透き通った水晶となり、ソレワターセを封じ込める。 「はぁ~~~~!!」 自分の思い。仲間の思い。全ての思いがひとつとなり、光となって水晶を輝かせていく。 「シュワ、シュワ~・・・」 パン! パン! パン! 断末魔の叫びを上げたソレワターセの体が、乾いた音を立ててはじけ、消えた。 「ふん。仲間との絆が、計り知れないですって?面白いことを言うのねぇ。そんなものがいかに脆くちっぽけなものであるか、プリキュアよ、次こそ思い知らせてあげるわ。」 忌々しそうにつぶやきながら、ノーザもまた、次元の扉の向こうへと消えていった。 「キュア~!」 タルトの背中の上で、すっかり元通りにはしゃいでいるシフォン。その顔を見て、ホッと安堵のため息をついたパッションの両肩が、後ろから同時にポン、と叩かれる。 「せつなっ!あたしたち、幸せゲットだねっ!」 「アタシたち、完璧よねっ!」 「うまくいくって、わたし、信じてた!」 振り向いたパッションに、輝くような笑顔を向けるピーチと、誇らしげに微笑むベリー。その隣で、穏やかに笑っているパイン。 いつもの光景。いつもの仲間たち。それが嬉しくて、パッションも三人に笑みを返して、こう続けた。 「ええ。私たち、精一杯がんばったわ!」 カーンと高い音を立てて、ピンが弾けとぶ。電光掲示板には、色鮮やかな「ストライク!!」の文字。得意げに戻ってきた美希が、祈里とせつなと、ハイタッチを交わす。 「みんな、お待たせ~!飲み物買ってき・・・うわぁっ!」 ペットボトルを両手に抱えたラブが、段差につまずいて、派手に転んだ。 「ラブ、大丈夫?」 慌てて彼女を助け起こしたせつなは、その情けなさそうな顔を見て、思わずクスクスと笑い出す。 土曜日の昼下がり。四人は、四つ葉町にある「クローバー・ボウル」に来ていた。 せつながおずおずと切り出した、土曜日の遊びの計画。 「みんなでお洋服を見て、CDを視聴して、プリクラ撮って、ドーナツを食べて・・・それから、ボウリングに行きたいんだけど。」 「せつなちゃん、それって・・・。」 「アタシたちが、初めてせつなと一緒に、遊んだコースよね。」 祈里と美希が目を伏せる。あの時サウラーの企みで、彼女たちは、せつなの占いがラブを悲しませたことを、非難したのだ。 「美希、ブッキー。謝るのは私の方よ。あなたたちを、利用しようとしたんだもの。」 そう言って、せつなも少し顔を曇らせたが、すぐに笑顔になって、三人の親友を見つめた。 「でも、私にとっては、みんなと・・・友達と初めて一緒に遊んだ、大切な思い出。だからもう一度、ちゃんとやり直したいの。今度は精一杯、楽しんでみせるわ。」 記憶をなくした美希が、自分のことをイースだと思っていたとき。せつなもまた、イースだった自分に、もう一度向き合うことになった。そして、気付いたのだ。 イースがラブに出会い、美希や祈里と出会って、実は少しずつ、今の土台を築いていたのだということに。 初めて食べたドーナツ。ラブから貰った、クローバーのペンダント。真剣に、でもとても楽しそうにダンスを踊っていた三人の姿。それを物陰から、そっと見つめていた自分。ダンスとプリキュアで疲労困憊のラブに、ダンスを選べと思わず食ってかかった、あの時の自分の気持ち・・・。 あざむき、戦い、奪おうとした。でもその間違いだらけの過去の中にも、今を築く土台となった、たくさんの出来事が、景色が、思いがあった。そしてそれは、イースが確かに経験し、見聞きし、感じてきたことだったのだ。 ―――ひとつひとつ、やり直していけばいいのよ。 せつなの心の奥深くに刻まれた、あゆみの言葉。だったら、あの時の四人の時間も、やり直したいと思った。イースが築いた小さな土台の上に、新しい思い出を、紡いでいきたいと思った。 「ねえ、せつな。ちょっと、言っておきたいことがあるんだけど。」 ラブと祈里の目を避けるように、美希がせつなに小声で話しかけてきた。ラブと祈里はと言えば、何度やってもストライクが取れないのはどうしてだろう?と、お互いのフォームを見せ合っては、真剣に試行錯誤している。 「何?」 不思議そうな顔で小首をかしげるせつなに、美希は言いにくそうに目をそらす。 「あのね。・・・言い忘れてたんだけど、アタシがタコが苦手なこと、実は、ラブもブッキーも知らないの。だから、つまりそのぉ・・・二人には・・・ね。」 「・・・。」 突然の美希の告白に、あぜんとするせつな。 二人とも幼馴染なのに、今まで隠し通してきたところが美希らしい・・・って、いや、違う、そんなことじゃなくて!! 「美希!思い出したのっ!?」 これ以上ないくらいに大きく目を見開くせつなに、美希はにっこりと、会心の笑みを浮かべる。 「まだほんの少しだけどね。まずはせつなに言わなくちゃ、って思って。」 「それで、頭痛は!?」 「もう大丈夫みたい。今のところ、頭痛は起きてないわ。」 美希の言葉に涙があふれそうになって、せつなはわざと、怒ったように顔をそむけた。 「もうっ!あんな言い方・・・びっくりするじゃないの。」 (そう言えば・・・いつも強がりばっかり言ってた気がするわね、せつなって。) 美希はそう思いながら、彼女の手に、やさしく自分の手を重ねる。 「ごめんね。まだ、思い出せていないことの方が多いの。でも、ゆっくりでもちゃんと思い出すわ。だからもう少しだけ、待ってて。」 「わかったわ。」 感極まった表情を隠しきれずに頷くせつなに、美希はいつもの調子で、パチリと片目をつぶった。 「アタシ、精一杯がんばるわ!」 「もう、美希。それ、私の台詞。」 二人の少女は、いつかの彼女たちのように、互いを見つめて、晴れ晴れと笑った。 「美希たーん。次、美希たんの番だよぉ!」 ラブの呼ぶ声に、ハーイ、と答えて、美希がレーンに向かう。 (それにしても、最初に思い出したことがタコって・・・全く、どういうこと?) その後ろ姿を見ながら、せつなが心の中でつぶやいたとき、美希の再びのストライクに、ラブと祈里が歓声を上げた。 せつなはクスリと笑って、自分の赤いボールを手に取り、仲間たちの元へと向かった。 ~完~
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/321.html
『それぞれの道。それぞれの夢』/夏希◆JIBDaXNP.g 蒼乃美希様。あなたは無事、一時審査を通過されました。 二次審査の日時と詳細をご案内します。 日課の早朝ランニングを終えたアタシを待っていた一通の封筒。 ついに、来た。緊張に震える手で握り締める。 超がつくほど有名なファッション雑誌の専属モデルのオーディション。海外にも拠点を持ち、 数多くのスーパーモデルを輩出しているトップモデルの登竜門だ。 でも……。 ミユキさんから呼び出しがあった。大会後、初めてのダンスレッスンだ。 気持ちを鎮め、耳を澄ます。スピーカーから流れる音楽に意識を預け、全身をシンクロさせる。 心が弾み体が自然に動く。指先にまで張り巡らせた神経は、目視しなくても隣で踊る仲間の動きを感じ取る。 音楽が止み、ポーズを決める。これで完璧! 確かにそう感じる。訪れる満足感、充実感、そして開放感。 同じく良い表情をしている二人を振り返る。続けてきて良かったと心から思う。 「お疲れ様、みんな。思わずコーチ忘れて見とれちゃったわ。そして大会の優勝、あらためておめでとう」 満足そうな表情のミユキさんが賞賛の言葉をかけてくれた。始めは叱られてばかりだったっけ。 そう思い出して苦笑する。足を絡ませて転んだのも良い思い出だ。 「せつなちゃんが外れてプロデビューの話は少し伸びているの。でも、三人で登録してもらえるように私も働きかけてるから、もう少し待っててね」 「「はい、お願いします!」」 アタシは一人、ミユキさんの言葉に返事が出来なかった。 「やっぱ、ダンスって気持ちい~ね」 「うん、思った通りに体が動かせた時の感覚は言葉に出来ないくらい」 練習後の恒例行事。反省会と言う名のドーナツパーティー。 最高に楽しい時間のはずなのに、なぜか寂しい。会話も笑顔もどことなく空々しい。 好奇心で輝いている瞳が足りないからだ。恥ずかしそうに、嬉しそうに、そっと浮かべる笑顔が見られないからだ。 せつなが居なくなって一月が過ぎようとしていた。 ラブは相変わらず。ううん、もっとよく笑うようになった。ブッキーは、なんだか大人っぽくなった気がする。 アタシはどうなんだろう、と思う。自分のことはよくわからない。 でも、きっとせつなは夢に向かって精一杯頑張っている。だからアタシも“負けてられない”そう思う。 「よっ! ラブ。姉貴から聞いたぜ。プロデビュー決まりそうなんだってな。しかし、おまえら三人、本当に仲がいいよな」 「……じゃない。――三人じゃないよ!」 話しかけてきた大輔にラブが大声で叫んだ。自分の声に驚いてラブは真っ赤になって俯いた。 「ごめん大輔。あたし、何言ってるんだろう……。美希たん、ブッキー、先に帰るね」 「なんだ、あいつ?」 大輔は、逃げるように駆け出したラブを見ながら首をかしげる。 (相変わらずね。だから友達止まりなのよ) 悪気の無いのはわかるのだけど……。彼の間の悪さに呆れてしまう。 そして、やっぱり言えなかった。言えるわけがない。バックに入れたままの封筒を見て、ため息を付いた。 傷付いていないわけがない。寂しくないわけがない。 半身とも言うべき無二の親友と、最愛の家族と、離れることになったんだもの。 ラブに何もかも押し付けすぎたと思う。せめて、タルトとシフォンは自分が預かるべきだった。 そしたら失った寂しさも、少しはマシなものになっていたはずだった。 シフォンを無事に帰してあげられた。タルトの使命を果たしてあげられた。 せつなが夢を、自分のやりたいことを見つけられた。 それらは全て喜ばしいこと。もちろん心から祝ってあげたいと思う。 でも、それと寂しくないこととは別なんだ。 傷付き、苦しみ、涙を流しながら戦い続けた。 みんなの幸せも、自分の幸せも、どちらも捨てられない。いつかみんなで幸せになれる、そう信じて頑張ってきた。 なのに……ラブの手元に残ったものは、悲しいくらいにささやかで儚いものだった。 幼馴染のアタシ達には見えてしまうんだ。ラブの笑顔に隠された――涙を。 この上、やっと掴みかけたラブの夢まで断ってしまうなんて出来るわけが無い。 「美希ちゃん? どうしたの」 ブッキーが心配して覗き込む。アタシの手を取って見つめる。 それ以上の言葉は続けない。ただ側に居て、話してくれるのをじっと待つ。それがブッキーだった。 (ブッキーは、正式にダンス事務所からスカウトが来たらどうするの?) 声に出かかった質問をぐっと飲み込む。言えば悟られてしまうだろう。 「ごめん、ブッキー。いつか話すから。今日はこれで帰るわ」 振り切るように、逃げ出すように、その場を離れた。 情けない。バラバラじゃない。寂しいのも、悩んでるのも、ブッキーだって同じなのに。 ブッキーはきっとスカウトを受けるだろう。初めは迷っていたのも知っている。 でも、後半のダンスの上達は、迷いがある者の動きではなかった。 獣医の夢は持ち続けているだろう。だけど、それはそんなに急ぐわけじゃない。 勉強しながらでもダンスは出来るだろう。数年遅れたとしても、一生続けられる仕事でもある。 でも、アタシは……。モデルの仕事はそうは行かない。 昨年逃がしたチャンスだって、本当は痛かった。後悔なんて一切してないけれど。 モデルとして活躍できる期間はとても短い。十四歳という若さも、一流を目指して経験を積むには、決して早すぎる年齢じゃないんだ。 これまでは読者モデルだったからやってこれた。ダンスも練習だけだからやってこれた。 でも、ダンサーとしてプロのステージに立つならそうは行かない。大変な覚悟と責任が発生するだろう。 すぐやめるなんて出来ない。数年の遅れは、目指すトップモデル“ハイファッション”の舞台に立つには、絶望的な痛手になるだろう。 ダンスはもちろん愛している。モデルになるのも、明確な理由があってのことじゃない。 それでも、確かに夢に見たんだ――華やかなステージで、美しく輝く将来の自分を。 きっとなるって誓ったんだ――幼き日の自分自身に。 せつなが抜けて三人。ぎりぎりの人数だ。アタシのリタイヤは、そのままラブの夢の崩壊なんだ。 どうすればいいんだろう……。 ラブから、今のラブから夢を取り上げるなんて、それだけは絶対にできない。 悶々と悩む中、時間だけが空しく過ぎていった。 心が決まらないまま、オーディションの日がやってきた。 これまで積み重ねてきた努力の賜物だろうか。十分な睡眠と入念な準備。体が勝手に動いて完璧に進めて行く。 軽い生地、ラフで緩やかな衣装を選ぶ。一番大きな下着をつける。体に線を残すわけには行かない。 鏡を見て微笑む。ダメだ。笑顔だけは決まらない。視線に力が無い。 素人にはわからないだろう。感情をコントロールする術は心得ている。 だけど、プロの審査員の目は誤魔化せないだろう。 モデルの一番大切な条件は“顔の強さ”だ。大勢の人の中に居て、それでも埋もれない存在感。 気力の充実していない今のアタシには、それが無い。 このままじゃ落選する。 それもいいのかもしれない。自分で何も決められないのなら、あるがままを運命として受け入れるのも悪くはない。 そんな思いをすぐに振り払った。それは言い訳。他人の責任に転化したいだけ。 いつものように言い聞かせる。声に出す。 「アタシ、完璧!」 虚勢でもいい、アタシはアタシらしく真っ直ぐ歩いていこう。どんな結果が出ても、後悔せずに自らの責任として受け止めよう。 それだけは、その誇りだけは、何も決められない自分の最後の希望なのだから。 選考が始まった。 最初はポージングとウォーキングテスト。 ソツなくこなした。周りも一時審査を乗り越えた者ばかりでレベルは高い。それでも、この審査で落ちる気はしなかった。 ここで大きく絞られた後、休憩を挟んで面接とカメラテストが行われる。更に、その後の最終審査でグランプリが決められる。 夢を叶えるなら、そこまで到達しないと意味が無い。そして、その自信が今はとても持てなかった。 正午になった。食事の時間、とは言ってもまともに食べている者はほとんどいない。 皆、メイクのチェックや表情の確認に余念が無い。 体が震える。鼓動が高まる。しかし、情熱が、意欲が沸いて来ない。 「ラブ、ブッキー。そして、せつな。ゴメン」 何に対して謝ったのだろう。裏切ってコンテストを受けていることに対してなのか。 それとも、きっと応援してくれるだろう気持ちに応えられないことについてだろうか。 それすらもわからなくなっていた。 ふと、みんなの声が聞きたくなって携帯の電源を入れた。 一件のメールが入っている。ミユキさんからだ。 「美希ちゃん、オーディションなんだってね。今度こそ夢が叶うといいわね。ううん、絶対叶うわ。それと、私は行けなかったけど、東の窓の外を見て御覧なさい」 慌てて窓に駆け寄る。 向かいのビルの屋上に、大きな旗を立てている二人の人影があった。ラブとブッキーだ。 こちらの姿を認めたのか、大きく手を振ってくる。 旗に書かれた文字。 ――美希たん、がんばれ~―― そして、連なる名前。ラブ・祈里・せつな。 同時にメールが飛び込んでくる。 「もっと早く教えてくれたらよかったのに。今度こそ、絶対にモデルの夢をゲットだよ。あたし、せつなの分まで精一杯応援するからね」 「こんなことだろうと思って調べてみたの。ラブちゃんのためを思うなら、絶対合格しないとダメだよ。私、信じてる」 心を打たれる。目頭が熱くなる。溢れそうになる涙を懸命に堪えた。目が脹れあがってしまってはオーディションどころじゃない。 ラブとブッキーに返信する。 “ごめんなさい”じゃなくて“ありがとう”って。 見ていて、ラブ、せつな。アタシの夢を。精一杯頑張る姿を。 信じていて、ブッキー。幸せ、ゲットしてみせるから。 みんなより一足先にね。 瞳に力が宿る。表情に希望の輝きが灯る。絶対に合格してみせる。 当然よ! だってアタシは――完璧――なんだもの。 それまで空気と化していた美希の気配が膨れ上がる。圧倒的なまでの存在感の上昇。 会場がざわつき、ため息がこぼれる。嫉妬と羨望の視線が集まってくる。 自信を漲らせて、美しい足取りで最終選考に向かった。 「「「オーディション合格。グランプリおめでと~~」」」 カオルちゃんのお店でラブとブッキーとミユキさんがお祝いしてくれた。家でもきっと、ママ達がパーティーの準備をしていることだろう。 アタシはラブとブッキーに向き合う。ちゃんと、伝えなければならない。 「ラブ、ブッキー、ごめんなさい。アタシはファッションモデルの道を歩みたい。だから……もう、みんなとダンスは出来ない」 ラブとブッキーは最高の笑顔で頷いてくれた。作り物じゃない、心からの喜びを感じる。 「美希たんの夢は、あたしたちみんなの夢だよ。一年間――ありがとう。本当にありがとう。美希たん」 「美希ちゃんならきっと凄く素敵なモデルさんになれるって、私、信じてる。私も自分の夢を追うよ。これからちゃんと勉強始めるよ」 三人はミユキさんに向かい合う。 「ミユキさん、今まで本当にありがとうございました。凄く――凄く楽しかった……。たくさんの夢を見ました。たくさんの幸せをもらいました。クローバーは解散します。最後まで出来なくて、プロになれなくてごめんなさい」 涙声で語るラブ。深々と頭を下げるアタシ達三人。ミユキさんも涙を浮かべながら微笑んでくれた。そしてアタシ達を強く抱きしめた。 「お疲れ様、みんな。今まで本当によく頑張ったわね。私はみんなを誇りに思うわ」 アタシ達は全員で号泣した。こんなに泣いたこと、無いってくらいに。 落ち着いた頃を見計らって、カオルちゃんが揚げたてのドーナツとドリンクを差し入れてくれた。 「それで、ラブちゃんはこれからどうするの? もし、ダンスを続ける気持ちがあるなら、知り合いのダンスユニットを紹介することもできるけど」 ミユキさんが尋ねる。アタシ達も一番聞きたいことだった。 ラブは静かに首を振った。 「クローバーは本当に最高のユニットでした。だから今はどうしても、そんな気持ちになれないんです。少し考えて見たいと思います。あたしの幸せは、夢は何なのか」 ラブは続ける。たった一つの心残り。せつなに医務室で語った夢。 「あたしもいつか、あんな大きなステージで踊ってみたかった」 届かなかったな。と寂しそうに笑う。 「届くわ! 叶うわよ。その夢は」 ミユキさんが力強く宣言する。 「「「えっ」」」 「実はね、こうなるんじゃないかと思って、事務所のプロデューサーに相談していたの」 もうじき行われるトリニティの大コンサート。場所は再建した巨大ドーム。そこで五分間だけ、時間をもらえるらしい。 ダンス大会優勝チームのゲスト出演として踊っていいって。それを解散記念ステージにしようって。 「「「お願いします!」」」 緊張に震えながらも、アタシ達の心は決まっていた。 「紹介します。今年度のダンス大会優勝チーム、“クローバー”です。残念ながら、このステージで解散されるそうです。最後の雄姿、皆さんで称えましょう」 割れんばかりの大歓声に包まれる。観客の数は数千人。鼓動が早鐘のように打ち続け、足が震える。 ラブの方を見た。不思議に落ち着いていた。携帯に映るせつなの写真に何か語りかけている。 ブッキーは両手を合わせてお祈りしていた。やはり、落ち着いた様子に見えた。 しっかりしなさい! アタシは完璧なんだから。一番慣れているはずでしょう。自分に言い聞かせる。 「美希たん。ブッキー。そして、せつな。行くよ、あたしたちクローバーのラストステージに!」 この場に居ないせつなの名前を挙げた。ううん、居るんだ。アタシたちはいつでも一緒。そうよね。 演奏が始まる。音楽と、みんなの心と、観客の視線、全てがひとつになる。 初めは威圧された大勢の人々が、想いが、勇気となって体に流れ込んでくる。 色んなことがあった。 ブッキーの加入。ミユキさんを怒らせてしまったこと。無理して倒れてしまったこと。 そして、せつなとの出会い。結ばれていく友情。繋がっていく絆。 アタシは決して忘れない。ダンスがくれた沢山の喜びを。共に追いかける夢の素晴らしさを。 ラブ、ブッキー。アタシは一足先に夢を掴みに行く。せつなのように。 それぞれの道。それぞれの夢。一緒に居られる時間は減るかもしれない。でも、今は振り返らない。 みんなで輝いて。みんなで喜び合って。それが出来たらまた、きっと一緒になれるから。 アタシのママがそうだったんだって。 そして、祈る。ラブが本当の夢をつかめるように。行く先が希望に満ちているように。 誰よりも人の幸せを願った子だから。誰よりも幸せになれるはずだから。 新しい生活。新しい日々の始まり。誇りを持って進もうと思う。繋がった絆を胸に抱いて。 さようなら、クローバー。